風味絶佳

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【つまみ食いレビュー】突然ですが懐かしくなったので「さらば、わが愛 / 覇王別姫」について語ります【ネタバレあり】

Twitterで懐かしい作品と名前を見かけました。

 

 


なんとチェン・カイコー(陳凱歌)の息子が俳優になっていると…。

そんなに歳月が経ったんだなあ…(´;ω;`)


忘れもしない1993年4月…あれ5月だったかな?6月?(忘れている)

とにかくその頃に、Bunkamuraル・シネマで「覇王別姫」を観たときのことは忘れられません。

 

観終わったときのトリップ感

凄まじい中身の濃密度

レスリー・チャンの魅力

 

マジで今まで観た映画のなかでもダントツの衝撃度でした。

 

なによりこの映画を見た動機が

暇つぶし

だったということが我ながら思い出深い一因となってます。

 

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その日、私はとある用事の時間までだいぶあってどうやって時間を潰そうかと困っていました。

今みたいにスタバとかもないし、携帯電話もネットもない時代ですよ。

 

そこで映画でも見ようと、(今は亡き雑誌の)「ぴあ」を見てとにかく上映時間が長めの作品はないかと探しました。

面白ければラッキー、面白くなければ寝てればいいや、と思って見つけたのが「覇王別姫」。上映約3時間。まあこれで3~4時間は潰れるだろ…と渋谷へGO。


行くと観客私を入れて数名のみ。

でもBunkamuraル・シネマは当時としては画期的にきれいでこじゃれた映画館で(今みたいなシネマコンプレックスとかない)まー寝るにはぴったりだわ、と後部座席にどっかり座って上映を待ったのです。


そして約3時間後。

 

館内の照明がつくまで本当に放心してました。

 

よく「トリップする」とかいうけど、まさにあの状態。

 

いやもう寝るどころじゃなかった。

一瞬だって目を離せなかった。


中身の濃さと役者たち(子役含めて)の凄さに圧倒されましたよ。

当時はアジア映画が盛りがっていた頃ですが、香港・台湾あたりがメインで中国映画はあまり見てませんでしたが、これには参りました。

 

しばらく映画館のなかでぼーっとしてましたが、ハッと我に返って、そうだよ、用事に向かわないと!と慌てて移動したのでした。

 

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さらば、わが愛/覇王別姫』(さらば、わがあい/はおうべっき、原題: 覇王別姫)は、1993年の中国の映画である。日中戦争文化大革命などを背景として時代に翻弄される京劇役者の小楼や蝶衣の目を通して近代中国の50年を描く。原作は李碧華(リー・ピクワー)の同名小説。

覇王別姫」とは、劇中に登場する四面楚歌で有名な項羽と虞美人を描いた京劇作品。1993年第46回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。2008年に日本で舞台化された。(Wikipediaより)

 

「虞や虞や汝をいかんせん」で有名な場面を描いた京劇が当たり役となった二人の男性と一人の女性の物語。

京劇役者である小楼(チャン・フォンイー)と蝶衣(レスリー・チャン)、小楼の妻となる菊仙(コン・リー)の3人が主要人物となって、小楼のことを好きな蝶衣と菊仙で三角関係になりながら激動の時代が描かれます。


このとき私が知ってたのはコン・リーだけ。

「中国の山口百恵」というキャッチフレーズで中国はじめアジア圏では人気の女優さんでした。

 

レスリー・チャンはこの作品で初めて出会ったのですが、まあ、素晴らしすぎてだね。

禁じられた思いを秘めたまま京劇役者として生きていく蝶衣の演技がもう…(語彙力が追い付かない)

あまりにも感動して、この後レスリー・チャンの作品を観まくりましたわ。

 

ちなみにレスリー・チャンは香港の俳優なので北京語の台詞が大変だったらしいんですが、日本人の私にその違いが聞き取れるわけもなく。なので問題ナッシングで鑑賞できました。


当時の京劇の世界もすごく興味深かったです。師匠やタニマチの存在がなかなかエグかった…。

歌舞伎みたいに男性役者のみで構成されているので当然女役は男性がするんですけど、蝶衣は女役を任されます。

「女性になりきれてない」と師匠たちから指導されて苦しみますが、役に徹することでどうにかこうにかジレンマを乗り越えます。

このあたりの役と同化していく蝶衣の描き方が凄かった…。

だから蝶衣から小楼への思いは、虞から項羽への思いと一体となっているというか、なんか自己暗示みたいなものでもあるかなと思ったりもします。

 

あと、小楼と蝶衣の幼年期と少年期演じる子役たちがまたいいの!

この子たちを見つけてきた時点でほぼ成功しているな!ってぐらい。


幼年期

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少年期

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彼らももういいおっさんになってるだろうな…(´;ω;`)

 


ついでに成人期

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中国の百恵ちゃん(似てるっちゃ似てる)

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はっきり言って小楼って結構なクズ野郎なんで、蝶衣も菊仙もこいつのどこがいいの?と心の中でツッコんでました。

これがさあ、顔だけでもヒョンビンみたいだったら、まあ仕方ないかとか思うけど、えええ…そのビジュアルで?っていう(演技力は素晴らしいです)

 

でもね、ここで子役たちが演じてきた幼い頃からの小楼と蝶衣のあれこれが効いてくるんですよ。

 

人権侵害児童虐待バリバリのスパルタ式養成所で過ごした二人。特に蝶衣は耐えきれずに脱走したり反抗したりしますが、そんな蝶衣の支えになってくれたのが小楼。

友人のような、兄弟のような、仲間のような、そんな異なった関係がいくつも重なった複雑な環境のもと、疑似恋愛にも似た感情が芽生えていく過程に彼らの演技がすごく説得力を持たせてくれるんです。

だからまあ、しょうがねーなーと思いつつ、全然報われないんだろーなーと思いつつ、蝶衣の愛を我々は見守ることになる。

 

後半は弟子の登場、京劇をめぐる環境の変化、文化大革命のエグさなども絡んできて、愛と裏切りのコンボでクライマックスを迎えます。

そして、なんとも印象的なラスト。

このラストまで約3時間ノンストップで観てほしい作品です。

 

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そんなわけで「覇王別姫」、U-NEXTで見つけたときは小躍りして真っ先に視聴しましたが懐かしすぎて胸がいっぱいになったよ…。

つーか、確認したら2020年11月30日までになってるのではよ観て!

 

レスリー・チャンは残念ながら2003年に鬼籍に入ってしまいました。

もし生きていれば64歳(!)

想像もできませんが、白髪で皺だらけのレスリーも見たかったよ…。

 

改めてR.I.P.

 

さらば、わが愛 覇王別姫(字幕版)

さらば、わが愛 覇王別姫(字幕版)

  • 発売日: 2015/11/15
  • メディア: Prime Video