風味絶佳

エンタメは人生のスパイス

【つまみ食いレビュー】令和に映像化された意味の深さを噛みしめながら「大奥」について語ります(ネタバレあり)

「どこも人が多くて出かけるのはね…」という私と同じタイプの方へプレゼンするドラマ・第3弾!

ラストは「大奥」
なにげに日本ドラマのレビューは初めてなのです。

www.nhk.jp

 

※人物名はすべて敬称略となります(-人-)

 

それは忘れもしない今年の1月20日
そう、横浜でのファンミの日

東京に向かうために朝早く着いた空港の待合室、そのフロアのテレビに「あさイチ」が流れていました。
すると、ゲストに冨永愛を迎えて「大奥」の番宣が始まったんです。

眠気の覚めない頭でぼーっと見ながら、私の脳内には

ほおーーん、あの独特の世界観をちゃんと三次元にできるんですかい?
まあ、お手並み拝見といきまひょか

と、エセ関西弁のイケズなキャラが生まれていてw

というのも、私は原作の「大奥」の大ファンで。

それでもって、過去に何度か実写化されたものに関しては正直「うーん」って感じだったんですよw

なので、期待と不安が半々だったのですが、ダイジェストをチラ見して、お?なかなか良さげでは?と。

それで、業務が落ち着いてから録画していた全10話をね、ええ、この連休で一気見ですw

長いことネトフリやアマプラなどで海外ドラマばかり見ていたので、日本の連続ドラマをちゃんと見るのは久々だったんですが…

いやあ、面白かった!

観終わっての感想をざっくり言うと

NHKの時代劇制作班の底力

そして

キャスティングの勝利

といったところでしょうか。


腐っても日本放送協会

衣装・小道具・セットなどに関してファンタジーだからと手を抜かず、むしろ気合を入れたものが使われていたのがよかった。

設定がファンタジーだからこそ、そこが安っぽいとたちまち全体が胡散臭いものになってしまうものですが、そのへんはさすがNHKといったクオリティでした。

私、ドラマのセットとか衣装とか観察するの大好きなんですよ。
ここでも語りましたけどw

cinnamon2020.hatenablog.com

例えば水野や有功のパートで出てくる「お万ごのみ」こと流水紋の裃がどう再現されるかっていうのが結構重要で。

これがしょぼいとがっかりだわあと思ってたんですが、ちゃんとこだわりをもって準備してくれてました!

t.co

歴代将軍の衣装や髪型も

まだ戦国時代が色濃く残っている家光
華やかな元禄仕様の綱吉
質実剛健でシックな吉宗

とちゃんと本人のキャラと時代に合わせたスタイリングがされていてよかった!

これなら受信料を払ってる甲斐があるって思えましたねw

やっぱりね、なんだかんだ言ってもNHKの時代劇の歴史はすごいんですよ。
大河ドラマに新大型時代劇にと、いろんな枠で数々の名作を生み出してますから。

貴重な衣装やセットはもちろんのこと、時代劇のノウハウや現場を知っているスタッフも継承されていってほしいなあと心から思いました。


キャスティングに拍手

将軍たちをはじめ、細かい登場人物までキャスティングもうまかった。
この人で大丈夫?って不安になるような配役がありませんでしたね。

ビジュアルも原作から抜け出してきたようなっていう人も多くて、よく見つけてきましたね!と拍手したくなるようなキャラも。

貫地谷しほりの加納久通なんて、ぴったりすぎて顔がにやけるレベルw

 

また、片岡愛之助(藤波)石橋蓮司(村瀬)といった時代ものへの造詣が深い俳優たちの安定感もさすがで。

吉宗が総触れでようやく大奥を訪ねてきたシーン、「待たせたな」と声をかけられて藤波が言った「一日千秋の思いでお待ち申し上げておりました」

この台詞の言い回しがほんと良くってさあ。
「おお、さすが歌舞伎役者」!って感じで、何回もリピートしちゃったw

時代劇って所作や発声、台詞回しなどが独特だから、様になっているかどうかがはっきり出ちゃう。

そして観ていると言葉遣いがうつるw
「祝着至極」とか「それは重畳」とかね、もう大好きw

あと、黒沢あすかが出てたのも良かったな。
あすなろ白書」「嫌われ松子の一生」でも良い演技してて、好きな女優のひとりなんだけど。

吉宗の次男・宗武を後継に推す松平乗邑を演じていましたが、貫禄があって、所作も素敵でね。
ご本人のTwitterにもそんなコメントがあって。

やー、かっこいい!ちゃんと糧になっているんだよね。

なにかと韓国ドラマと比較されて、脚本の質がどうの、役者の層がどうのと何かとサゲられがちな本邦のドラマですが、いやいや、すばらしいスタッフも役者さんもたくさんおりますよ!って叫びたいです。

そして、どんなに時代が進んで顔立ちやスタイルが変化していても、やはり日本人には和装が似合うんだとしみじみ思えたドラマでした。

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ここからは、清川あさみによるセンスにあふれたキービジュアルとともに、それぞれのパートについてさらに語ります!

家光・有功編

 

逆転大奥の始まりとなる関係を純愛風に描いてましたね。

原作では、家光はもうちょっとドライというか、為政者としての才覚と冷酷さも見せつつ、有功との仲もきれいごとだけではないドロドロさがあるんですがw

でも、今回の堀田真由&福士蒼汰コンビの何が良かったって、とにかく見た目の年代が釣り合っていたのがよかった

2010年のTBSドラマでは多部未華子堺雅人だったんだけど、どれほどの演技力をもってしてもそこは厳しいと思うのよ…w

だって有功の登場時の設定10代だぜ?

ただですね、そうなった事情はわかるんです。

TBS版はドラマ放送後、続きは映画で!とばかりに綱吉編が企画されていて、そこで右衛門佐を堺雅人が演じていたんですね。

なぜなら原作では右衛門佐は有功に(性格は違うけど)顔は似ているという設定になってるから。

なので、有功も右衛門佐も同じ役者に演じさせたかったという趣旨は理解できます。

そもそも映画は主役が綱吉ではなく右衛門佐なんですよね。
クレジットが堺雅人が一番、綱吉役の菅野美穂が二番手だし、表記も「右衛門佐・綱吉篇」ですから。

だけどさあ、やっぱり家光役の多部未華子と並んだら良くて年の離れた兄妹、下手すると親子に見えるというか…w

右衛門佐は登場時30代なので、全然違和感ないんですけど。

私、ドラマや映画では、演技力とかより、こういう「ちゃんとその年齢、その人物に見えるのか」ってことのほうが気になるのね。

例えば逆に、とても若い俳優が老け役をするときに、ちょっと白髪を足すぐらいですませてるとかも気になる。
特殊メイクでもなんでもして、ちゃんとシワもたるみも作らんかい!ってw

そういう意味では、ドラマも映画も綱吉と右衛門佐は老け込みが足りんかったね。
あの二人はさ、それぞれが老いの境地になってから結ばれたというのもポイントなわけでさ、そのあたりをしっかり作り込んでほしかったw


綱吉・右衛門佐編

 

綱吉は映画では菅野美穂、ドラマでは仲里依紗で、どちらも演技力は申し分ないけど原作のイメージとはちょっと違うな~って。

ただ、妖艶さみたいなものは仲里依紗版・綱吉のほうがよく出ていて、独自の雰囲気を作りあげてたと思います。

個人的には、柳沢吉保を演じた倉科カナのほうが原作に近い蠱惑的な綱吉になったんじゃないかな?って気もします。
仲里依紗は肉食系の要素が強すぎるのよねw

右衛門佐役の山本耕史は、画面に出ただけで「ドラマとして盤石」って感じの安心のヤマコーでした。
この人はもう何させても上手いからw

綱吉のパートも大筋では原作に沿ったものだったけど、「月のものなど~」のところは原作の表現のほうが悲哀が出ていたと思うな。
映画は、そこは原作どおりでよかった。

でも、映画では飛ばされた、私の好きな「幼い吉宗との対面シーン」を描いてくれてたのでよしとしますw

 

吉宗・水野編

 

Season1は吉宗が「没日録」を読む形で進むなど、ドラマ全体の核の部分も担った吉宗役

映画版の柴咲コウも悪くなかったけど、冨永愛も黒の木綿のお掻取りを着こなす、粋な上様を演じていて良かったです!

今までの常識から考えると時代劇ではキャスティングされなかったであろう高身長なので、衣装を誂えるのも大変だっただろうなあとw

エピソードもほぼ原作に忠実で、将軍後継のあたりは難しいから省くかなと思いきや、ちゃんと描いていたので脚本家グッジョブ!って感じです。

このあたりの注目はやっぱり家重役の三浦透子
難役をよく演じきったと思います。

 

吉宗から後継を言い渡される感動のシーン。

ドラマもよかったけど、でも原作はここで家重のことを「無能な将軍としてその一生を終えた」というナレーションで締めくくるんですよね…。

感動だけで終わらせず、現実の皮肉さも描いている原作の凄みを感じます。

家重といえば、世代によっては1995年の大河ドラマ「八代将軍・吉宗」の中村梅雀の印象が強いと思いますが、またひとつすごい「家重」像が誕生したなあと思いました。

なんでも、この家重パートを演出した方は、中村梅雀のパートを演出した方と親子なんだとか!
なんという運命のめぐりあわせ…!

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残念だったところ

これはもうはっきりと「尺が足りない」ことですね。

韓ドラ並みに全20話でもよかったのにって思うぐらい、いろいろ端折られたのが惜しい!
その分、オリジナルの解釈などを入れ込んでカバーしていて、それはそれでよかったけど。

四代の「左様せい様」に、六代の家宣、真鍋詮房、月光院の絡みも観たかったな…(´;ω;`)

特に「江島生島事件」はスピンオフでもいいからやってほしいぜ!!

江島生島事件は歌舞伎の芝居小屋が重要な舞台になるので、藤波(片岡愛之助)がストーリーテラーとかで再登板してやってくれないかなw


Season2のみどころ

マジでSeason2は端折るところあるの?ってくらい重要なエピソードばかりで、どうやってまとめるのか興味津々。

疱瘡の撲滅に絡んで、尊王攘夷大政奉還幕末のイベント目白押し
天璋院和宮西郷隆盛にと歴史上の有名人も総出演

それとSeason1は女優陣の演技合戦を観られて超興奮したのですが、Season2は男の将軍が復活したり、蘭学や医療現場で活躍する男性キャラも多く、また違った雰囲気になりそうだなと思ってて。

でもSeason1の最終回に映った平賀源内、黒木、青沼のキャスティングを見ると今のところ期待しかないって感じですね。

個人的注目は、まず11代将軍・家斉の生母であり、原作中最凶のモンスター徳川治済を誰がどんなふうに演じるかということ。

こいつです↓

 

Twitterを観ていると泉ピン子とか渡辺えりとか、いろいろ予想されていて楽しいw

治済のサイコパスっぷりが炸裂する9~11巻あたり、読んでてマジで具合悪くなりそうでしたが、手加減せずにとことん胸糞悪くやってほしいです。


そして10巻最後の黒木の叫び

これはね、ちょっと日本国民みんなに聞いてほしいところだね。
「善良なる大衆の正義」の怖さを描いた秀逸なシーンだと思います。

最後に、家定と天璋院カップ

この二人がとてもいいんですよー!家定の腹心・老中の阿部正弘とともにどう描かれるのか楽しみ(頼むからナレーションだけで終わらせないでえ…!)

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今まで映像化された「大奥」は、男女逆転という、いわばエキセントリックな設定に焦点があたっている感じでした。

今回のドラマ化は奇しくもコロナ禍を経たことによって、上記の設定に加えて疫病という未知のものへの恐怖、そしてそれにあたる政府(幕府)や医療従事者、世相などの描かれ方にリアリティを持って訴えてくる副産物があったように思います。

ドラマ化の企画があがったのはコロナ禍前だったそうですが、令和の今に放送されたっていうのは何か意味深いものを感じてしまいますね。

そしてね、今回レビューを書くにあたって原作も読み直したりしたけど

やっぱり名作

なんですわ…!

ドラマ化でこの作品を知った人もぜひ読んでほしい。
全19巻と長編ですけど「安心してください、完結してますよ」ということで大人買いの一気読みしてくださいw

いや、ほんと完結させたってだけでも表彰ものです…(美内せんせいも見習って…)

その原作と同じ結末になるのか、はたまたオリジナルの展開になるのかドキドキですが、秋の再開を楽しみに待ってます。

 

今回、久々に日本の時代劇を観て、どの国のものであってもこういう歴史や文化を堪能できる世界観のエンタメが好きだなあと改めて思いました。

 

てなわけでユチョンさん!!
時代劇のオファー(私が)お待ちしております!